2008 |
09,13 |
«GARNET»
「…こら、駈、おとなしくしな」
「おと…おとなしくって……何、そのでっかいホッチキス」
「一瞬だよぉ、痛くない痛くない」
「嘘だああああああああ!」
「おと…おとなしくって……何、そのでっかいホッチキス」
「一瞬だよぉ、痛くない痛くない」
「嘘だああああああああ!」
たとえば、悩んだとき。
不安なとき。
困ったとき。
嬉しいとき。
つい、耳に手をやるのが癖になっていたように思う。
「あんたは昔っからやんちゃで怪我が多いんだから」
あのときは、じんじんしびれる感覚に慣れなくて。
「お守りみたいなモンだと思って、つけときな」
「円ちゃん…赤がお守りになるのは女の子じゃない?」
「しかも9月の誕生石、サファイア…」
「うっさいな! だったらあんたたち、もっとカンパしな!」
女三人で姦しいとはよく言ったものだ。三人三様の構えで応戦する姉たちを呆れて見やって、もう一度耳に手をやる。
血のように真っ赤な石。
耳にかかる髪が丁度影を作って、いっそ黒々と輝いていた。
耳に小さな夜。
まだ少し慣れずに、くすぐったい思い。洗面台の鏡で、それとなく姿をうかがった。
しっくり来るようになるかな。また、そのうちに。
無意識に耳元へ手を運んだ瞬間、ポケットの中に振動。
ディプレイには『姉1』、の文字。
…姉ちゃんだ。
なんとなく照れくさい思いでケータイをポケットに突っ込んで。
ちょっと電話してくるね、なんて断って、暗い夜道を小走りに行く。
「あ、もしもーし」
電話越しの声は不思議だ。祝いの言葉も、少しすましたような姉のよそ向き声。この小さな機械を通せば、自分の声もこんな風に聞こえてしまうのだろうか。
「うん、うん…ありがとう」
明日は土曜日でしょ、たまには帰ってきな。
そんな一言に、力強く頷いて。
外は秋虫の演奏会。風吹く夜長に命を燃やす。
ふと手を開けば赤い石。何故か懐かしく遠い声に、そっと耳へと手をやって。
ざわざわと胸が鳴る。
手放せない赤い石。未だ。
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カケル
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瑠璃堂キャンパス/高校3年5組
黒燐蟲使い×牙道忍者
身長メモ:187.2cm(081213現在)
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