«REVENGE»

髪なんか切ったってなにも惜しくはない。

「じゃあなんで伸ばしてんの？」
「別に。伸ばしてんじゃなくて、切るのが面倒だっただけ」

ああ、やばい。
次英語だったのに辞書忘れた。
ごめん、貸してもらっていい？

「近々切るよ。実習だってあるし」
「…なんかちょっと変わったね」
「そう？　そりゃあ中坊のときと何にも変わってなかったら問題だよ」

寒気がする。

「あー…ごめん、なんか調子悪い。やっぱ今日は帰るわ」
「大丈夫？　代返しとく？」

「んーん、だいじょぶ。日数は足りてるはずだから」



――あの交差点の今度の事故、
　　　亡くなったのって、お姉さんなんでしょ。
　　　ほら、教育学部の、――



生命の失われた場所は、未来永劫時を止める。
…なんて、小説か何かの一節だったか。

「花って柄じゃあないよなぁ、歩」
俺一人で食っててごめんね。
買ったばかりの肉まんが、ほかほかと温かい。


髪なんか切ったってなにも惜しくはない。
切った後で、鏡を見るのが恐ろしいだけだ。
会いたい。
会いたくはない。

『駈』
『あたし、一緒にいようか』

「…ううん、いいよ。大丈夫。歩は眠ってて」


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相方さんにお送りしたものから少し設定が変わってしまいました。
今はこれしか無理だ。
こういう風に背負わすものじゃないのですが…ごめんね、駈。